移住して出合った
雪国の食材を
生かし切る


桑名さんは静岡県修善寺の出身なんですよね?
どうして魚沼に?

桑名

東京で知り合って結婚した妻の実家が、ryugon のある六日町で、こっちで仕事をするのもいいかなと。
もう一つ、スノーボードが趣味で湯沢に通っていたこともありました。土地勘も少しあったし、スノーボー ドが存分にできる、と。


移住してもう、、

桑名

25~6 年になります。当初は、新潟の料理をほとんど知らなくて。仕事を通して出合い、学んで、今に至ります。


初めは「HTAGO 井仙」の料理長でしたね。その後「ryugon」に移って。

桑名

井仙では、地元の料理といわゆる東京の料理のハイブリッドを提供していました。いらっしゃるお客さまが、地元の方もいれば旅行者もいる。そこで、社長と話し、方向性を決めました。


井仙では、コース仕立てで供されますよね。妻有ポークを温泉でローストしたりと、調理法は目新しいけれども、土地のものを使って、地域を活かしている、という印象です。

桑名

ハイブリッドといっても、変にアレンジしないことを守っています。素材はできるだけ「今、ここでしか食べられないもの」。ただ、奇を衒うのではなく、素材のおいしさを引き出して、地元を生かす。ryugonに移ってからも、基本は同じです。


移住して、料理に対する考えというか、思いというか、何か変わったことはありますか?

桑名

素材の持ち味を引き出すというのは、和食の基本です。東京にいた時は、懐石料理でそれをやっていた。ただ、野菜にしろ魚にしろ、近くで採れるところに住んでからは、「活かさないと」という気持ちが自然と大きくなりましたね。「今はこれが一番美味しい」「旬を逃さず召し上がっていただきたい」。そう思って料理を考え、作っています。


ryugon のコースはどのくらいの頻度で変わるんですか?

桑名

年5回ですね。まず自分でコンセプトを考え、コースを組み立ててから、社長を中心に、社内で試食してもらいます。アドバイスをもらって、変えたり、整えたり。


大切にしていることは何ですか?

桑名

「お客様に喜んでもらいたい」。それに尽きますね。以前はもう少し、料理人としての自分の思いが強くあって、それが料理にも出ていたと思いますが、変わってきたと思います。


お客さまに言われて、嬉しかったことはありますか?

桑名

ryugonもリピーターが多いんです。となると、同じ時期でも、変えていかないとならない。リピーターの方から「今日も新しい料理、期待してきました」と言われるとうれしい。もちろん、プレッシャーもありますが「期待している」というのは、私にとって大きなやりがいです。


噂によると、ご自身で畑も始めたとか?

桑名

いやいや、ほんの少しですよ。家を建てたのをきっかけに、庭の隅でちょこっと。


何を作ってるんですか?

桑名

トマトやキュウリ、ズッキーニ。とりあえず、栽培しやすいものから始めましたが、これが予想以上に難しい。ryugonでも、農家から直接、野菜を届けてもらっていますが、全然、違う。


家庭菜園自体、桑名さんのイメージとかなり違うんですが、、、

桑名

自分でもそう思います。昔の自分だったら想像できない。でもやってみたら楽しくて。昨日の休みも、土を作ってましたよ。


本格的になっていますね。

桑名

なんでおいしくなるのか、ならないのか。畑で考えたり、調べたり。そうなると、調理する時の野菜の見方も変わって、「旬を逃さない」ことの大切さが、いっそう強くなりました。おいしいところを食べていただかないと、もったい無い、申し訳ない。


今すぐにでも、桑名さんの料理をいただきたくなりました。期待しています。

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